自然界では、生きものたちはみんな、何かを奪い合って生きている。
――そんなイメージを、私はどこかで持っていました。
限られた水や栄養を取り合って、強いものが生き残る。
でも、土の中の微生物について知るようになってから、少し違う景色が見えてきました。
そこには、
「奪い合う」のではなく、「分かち合う」ことで生きている生きものたちがいる。
植物と菌の関係も、そのひとつです。
植物の根っこには、菌がいる
土の中には、目には見えないたくさんの菌がいます。
その中には、植物の根と一緒に暮らす菌もいます。
代表的なのが菌根菌です。
菌根菌は、植物の根と共生します。
「共生」という言葉は少し難しく聞こえますが、簡単に言えば、
一緒に暮らし、お互いにメリットがある関係
のこと。
どちらか一方だけが得をするのではありません。
植物にもメリットがあり、菌にもメリットがある。
だからこそ、長く続いてきた関係なのです。
植物と菌は、何を分かち合っている?
植物は、光合成によって自分で有機物をつくることができます。
その一部を菌に渡します。
では、菌は何をするのでしょう。
菌根菌は、植物の根とつながりながら、土の中に細い糸のような菌糸を伸ばしていきます。
この菌糸は、植物の根よりもずっと細く、根が届きにくい土のすき間にも入り込むことができます。
そのため、菌糸は植物にとっての「第二の根」とも表現されます。
菌は植物から受け取った炭素を、自分自身が生きるために使いながら、菌糸を伸ばしていく。
そして、土の中の水やリンなどを植物が利用するのを助ける。
ざっくり言えば、
植物は自分が作ったものを菌に分ける。
菌は土の中で働き、その力を植物に返す。
そんな交換が行われています。
「助けてあげる」ではなく「一緒に生きる」
ここが、私が面白いと思ったところです。
最初は、
「菌が植物を助けてあげている」
という感じなのかなと思っていました。
でも、よく考えると、それだけではありません。
菌だって植物からもらったものを必要としています。
植物も菌の力を必要としています。
つまり、
どちらかが一方的に相手を助けているわけではない。
お互いが、自分の得意なことを使って相手に何かを渡している。
植物には植物の得意なことがある。
菌には菌の得意なことがある。
それを持ち寄って、一緒に生きている。
これが「共生」なのだと思います。

自然界には「奪い合い」だけじゃない
もちろん、自然界には競争があります。
生きもの同士が食べたり、食べられたりすることもある。
だから「自然はみんな仲良し」という話ではありません。
でも、
自然界には、競争だけではなく共生もある。
これは、土の中を知ることで見えてくる大切なことのひとつだと思います。
自分だけで全部を手に入れようとするのではなく、
「私はこれを持っている」
「私はこれができる」
「じゃあ、それを交換しよう」
そんな関係が、植物と菌の間にもある。
なんだか、人間の暮らしにも通じるものがあります。
「多様性」があるから、分かち合える
植物だけでなく、土の中には本当にたくさんの微生物が暮らしています。
それぞれに、できることや得意なことが違う。
だからこそ、ひとつの生きものだけではできないことも、全体としてできるようになる。
これは、以前書いた「多様性」の話にもつながります。
強いものがひとつあればいいのではなく、
いろいろなものがいて、それぞれが違う役割を持っている。
そして、その違いを生かしながらつながっている。
そんな状態が、自然の豊かさなのかもしれません。
畑を見る目が変わった
自然農を始めてから、畑を見るときに、地上にある植物だけではなく、土の中のことも想像するようになりました。
この根っこの先には、どんな菌がいるんだろう。
菌糸はどこまで伸びているんだろう。
植物と菌は、何をやり取りしているんだろう。
もちろん、肉眼では見えません。
でも、見えないからといって、何も起きていないわけではない。
土の中では、植物と菌がつながり、物質を交換しながら生きている。
そう思って土を見ると、ただの土が、急に「生きものが暮らす場所」に見えてきます。
「草」も生態系の一部と気が付いたことは、こちらに書きました。
「分ける」と、豊かになる
私たちは、「分ける」と自分の持っているものが減るように思いがちです。
でも、植物と菌の関係を知ると、
分かち合うことで、自分ひとりでは得られなかったものを得られる
ということが見えてきます。
植物は菌に分ける。
菌は植物に返す。
そして、その関係が続くことで、植物も菌も生きていける。
「共生」という言葉の奥には、
自分のものを守るだけではなく、自分が持っているものを誰かと分かち合うことで、互いに豊かになる
という世界があるのかもしれません。
土の中では、そんな関係が、私たちの目に見えないところで続いています。
植物は、ひとりで生きているわけではない。
そして、もしかしたら私たち人間も。
自然を見ていると、「生きる」ということの別の形を教えてもらえる気がします。



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