自分の体は、自分だけのものじゃなかった。見えない微生物の世界

自分の体は自分だけのものじゃなかった 私たちの周りの微生物

「あなたの体は9割が細菌」

このタイトルを初めて見たとき、私は思わず「えっ?」となりました。

自分の体は、自分のもの。

食べたものを消化して、栄養を吸収して、体温を保って、病気にならないように免疫が働く。

そんなふうに、私たちの体は「自分自身」が維持しているものだと思っていました。

ところが、微生物について知れば知るほど、その考え方が少しずつ変わってきます。

私たちは、自分ではないたくさんの生き物と一緒に生きている。

これって、かなり大きなパラダイムシフトだと思うのです。

「9割が細菌」は本当なの?

今回読んだのは、アランナ・コリン著『あなたの体は9割が細菌―微生物の生態系が崩れはじめた』。

2016年に日本語版が出版された本で、体内の微生物と健康の関係について書かれています。

ただし、最初に一つ。

現在では「人間の体は細菌が9割」という数字を、そのまま事実として受け取るのは正確ではありません。

以前は「人間の細胞1に対して細菌が10」という説が広く知られていましたが、その後の研究では、人間の細胞と細菌の数はもっと近く、ほぼ同じ桁だと見積もられています。70kgの「標準的な成人」をモデルにした研究では、細菌約3.8兆個、人間の細胞約3.0兆個と推定されています。

つまり、「9割」という数字そのものにこだわる必要はありません。

むしろ私が驚いたのは、

数字が9割でなくても、私たちの体の中には、とんでもない数の微生物が暮らしている

ということでした。

腸の中には、とんでもない数の生き物がいる

私たちの腸には、たくさんの細菌を中心とする微生物が暮らしています。

そして、それらはただ「そこにいる」だけではありません。

食べ物の成分を利用したり、私たちの消化では処理しにくいものを代謝したり、さまざまな物質をつくったりしています。

腸内微生物の代謝は、消化だけでなく、免疫など体のさまざまな働きとも関わっていることが研究されています。

つまり、

「人間が食べ物を食べる」

という一見シンプルな出来事の中にも、

人間+微生物

という共同作業がある。

そう考えると、体の見え方が変わってきます。

しかも、微生物は腸だけじゃない

微生物は腸の中だけにいるわけではありません。

皮膚にも、口の中にも、鼻の中にも、さまざまな微生物が暮らしています。

そして、ここで私はさらに驚きました。

土の中にも、ものすごい数の微生物がいる。

たった1gの土の中に、ものすごい数の微生物がいる

土1g。

たったこれだけの土の中に、数億〜10億以上の微生物が存在することがあります。

1gですよ。

小さじ1杯どころか、その何分の一にも満たないような量です。

そこに、細菌や菌類など、さまざまな生き物が暮らしている。

しかも、それぞれがバラバラに生きているのではありません。

有機物を分解したり、栄養素を循環させたり、植物の根と関わったり。

たくさんの生き物が関係し合いながら、土という生態系をつくっています。

キエーロコンポストも微生物の分解の力を借りています。

「土」と「腸」が、なんだか似て見えてきた

ここで、私の中で何かがつながりました。

私は最近、自然農の畑で土と向き合っています。

草を刈ったり、草を畝に積んだり、生ごみをキエーロに入れたり。

以前は「土をどうするか」という視点で考えていました。

でも、微生物のことを知ると、

「土をどうするか」ではなく、「土の中の生き物たちにどう暮らしてもらうか」

という見方もできるのではないかと思えてきます。

これって、腸内環境とも少し似ています。

腸の中にも、たくさんの微生物が暮らしている。

土の中にも、たくさんの微生物が暮らしている。

どちらも、単独の生き物ではなく、たくさんの生き物がかかわりあう「生態系」です。

私の畑の生態系について考えた記事はこちら。

畑の中にいろいろな植物を育てている様子はこちら。

そして、まだ分かっていないことがたくさんある

微生物の研究は進んでいます。

でも、まだまだ分かっていないことも多い。

どんな微生物がいるのか。

それぞれが何をしているのか。

他の微生物とどう関係しているのか。

私たちの体や植物に、どんな影響を与えているのか。

すべてが分かっているわけではありません。

だからこそ、私は微生物の世界にどんどん興味が湧いてきました。

目に見えない。

小さい。

でも、数はものすごく多い。

そして、私たちが気づかないところで、いろいろな仕事をしている。

なんだか、すごくないですか?

「自分の体」という考え方が変わった

この本を読んで一番大きかったのは、微生物についての知識が増えたことではありません。

「自分の体は、自分だけのもの」という感覚が変わったことです。

私の体の中には、私ではない生き物たちが暮らしている。

その生き物たちと関わりながら、私は生きている。

そう考えると、

「健康になる」ということも、

「自分だけを整える」

という話ではないのかもしれません。

自分の中にいる小さな生態系とも、うまく付き合っていく。

そんな見方ができるようになりました。

腸内の生態系を育てるためにどんなものを食べているか、はこちらに書きました。

そして、それは畑の土も同じなのかもしれません。

植物だけを見るのではなく、土の中の見えない生き物にも目を向ける。

草を「邪魔なもの」とだけ考えるのではなく、その草が土に何をもたらしているのかを考えてみる。

生ごみを「捨てるもの」と考えるのではなく、微生物にとっての食べ物として見てみる。

そうすると、今までただの「ゴミ」や「土」や「草」に見えていたものが、少し違って見えてきます。

見えないけれど、ものすごくいる。

そして、私たちはその世界の中で生きている。

微生物のことを知ると、どうやら「自然を大切にする」という言葉の意味まで、少し変わってくるようです。

今回読んだ本

『あなたの体は9割が細菌
―微生物の生態系が崩れはじめた』

アランナ・コリン 著
矢野真千子 訳
河出書房新社

微生物と人間の関係を知る入口として、とても興味深い一冊でした。

※本のタイトルにある「9割」という数字については、その後の研究で見直されています。この記事では、数字そのものよりも「人間は微生物と共に生きている」という本の大きなテーマに注目しています。

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