「雑草という草はない」
こんな言葉を聞いたことがあります。
NHKの朝ドラ『らんまん』のモデルになった植物学者、牧野富太郎の言葉として、よく知られている言葉です。
私は以前、高知県立牧野植物園を訪れました。
そのとき撮ったのが、この写真です。

牧野富太郎の姿のまわりを、色とりどりの植物が埋め尽くしています。
「植物って、こんなにたくさんあるんだ」
そんなことを思いながら園内を歩いたのを覚えています。
でも、畑を始めてから、植物を見る目が少し変わってきました。
畑に生えてくる草を見て、
「これは何だろう?」
と考えるようになったのです。
そして、ふと思いました。
そもそも「雑草」って、何なんだろう?
野菜と雑草は、いったい何が違うのでしょう。雑草」と「野菜」。
私たちは、なんとなく別のものとして考えています。
畑で育てているのが野菜。
その畑に勝手に生えてきたのが雑草。
……でも、よく考えてみると、ちょっと不思議です。
たとえば、ヨモギ。
春になると道端や空き地にたくさん生えていて、草刈りをすれば「雑草」として刈られます。
ところが、ヨモギを大切に育てている人もいます。
摘んで草餅を作ったり、お茶にしたり、料理に使ったり。
では、その人が育てているヨモギは「雑草」なのでしょうか?
雑草という植物はない
調べてみると、「雑草」というのは植物の分類ではありません。
植物そのものに「雑草」という名前がついているわけではないのです。
人が育てたい植物のそばに、意図せず生えてきた植物。
そして、その場所では「邪魔だな」と思われる植物。
それを私たちは、まとめて「雑草」と呼んでいます。
つまり、
雑草かどうかは、植物の性質だけでは決まらない。
そこに生えている場所や、人との関係によって変わるものなのです。
ヨモギは野菜なの?
たとえばヨモギ。

道端に生えていれば雑草。
摘んで食べれば野草。
自分で畑に植えて、毎年収穫するために育てれば、栽培植物。
さらに、食用として生産・販売されていれば、野菜として扱われる場面もあります。
同じヨモギなのに、ずいぶん立場が変わります。
考えてみれば、ちょっと面白いですよね。
「野菜」は人間が選んできた植物
そもそも、私たちが普段「野菜」と呼んで食べている植物も、最初から野菜だったわけではありません。
人間が、
「これは食べられる」
「これはおいしい」
「これは育てやすい」
「もっとたくさん作りたい」
と選び、育て、品種を作り、暮らしの中に取り入れてきた植物たちです。
今では当たり前のようにスーパーに並んでいる野菜も、長い時間をかけて人間との関係を作ってきた植物なのだと思うと、少し見え方が変わってきます。
畑を始めて、「雑草」が気になり始めた
私自身、自然農で畑を始めてから、以前よりずっと「草」を見るようになりました。
畑を始める前なら、名前も知らずに抜いていた草。
でも今は、
「これは何という草だろう?」
「この草は、何かに使えるのかな?」
と気になります。
カラスノエンドウもそうでした。

最初は畑に生えてくる草のひとつ。
よく見ると、花がかわいい。
調べてみると、食べることができるということがわかりました。
さらに、お茶にすることもできます。
「雑草」だと思っていたものが、少しずつ違う顔を見せてくれます。
雑草は「役に立たない植物」なのか
ここで、もうひとつ気になることがあります。
私たちは無意識に、
野菜=役に立つ植物
雑草=役に立たない植物
という分け方をしていないでしょうか。
でも、本当にそうでしょうか。
草は土を覆います。
根を張ります。
虫や小さな生きもののすみかにもなります。
枯れれば土に戻っていきます。
そして、人間が食べたり、お茶にしたり、薬草として利用したりできるものもあります。
もちろん、畑では作物の生育を邪魔する草もあります。
だから「雑草を全部残せばいい」という話ではありません。
ただ、
「邪魔だから抜く」だけではなく、「この草は何をしているんだろう?」と一度立ち止まってみる。
それだけでも、畑の景色は少し違って見えてきます。
雑草と野菜の境界は、案外あいまい
考えてみれば、
道端のヨモギは雑草。
畑で育てるヨモギは栽培植物。
食べれば野草。
売れば商品。
そんなふうに、ひとつの植物が、人間との関係によっていくつもの名前を持つことがあります。
もしかすると「雑草」と「野菜」の間には、はっきりした線があるわけではないのかもしれません。?
「人間」にもはっきりした線がないかも⁈という話はこちらに書きました。
あるのは、
「私たちが、その植物をどう見ているか」
という違いなのではないでしょうか。
畑に生えている草を見て、
「また雑草が生えてきた」
と思うのか。
それとも、
「この草、何だろう?」
と思うのか。
その小さな違いから、植物との付き合い方が変わっていく気がしています。



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