畑で綿を育てています。
今年の夏は、とにかく暑い。
そんな中で、綿は元気に育っています。
水はほとんどあげていません。
肥料もあげていません。
それなのに、葉を広げ、枝を伸ばし、花を咲かせました。
最初は白かった花が、時間が経つにつれて少しずつピンク色に変わっていきます。
花が終わったところには、小さな実もでき始めています。
この実がこれから大きくなって、やがて弾けると、あのふわふわした綿が出てくるはずです。
綿を育てるのは初めてなので、毎日の変化を見るのがちょっとした楽しみになっています。
綿って、アメリカの植物じゃなかったの?
「綿花」と聞くと、私は以前、アメリカの広大な綿花畑を思い浮かべていました。
白い綿花が一面に広がっている風景です。
ところが、綿のことを調べてみると、ずいぶん長い歴史を持つ植物だということがわかりました。
そもそもワタは日本原産の植物ではありません。
日本には、平安時代の799年、三河国に漂着した人によって綿の種子が伝えられたという記録があります。
ただ、そのとき伝わった綿がそのまま日本に定着したわけではなく、その後も何度か綿が伝来しています。
日本で綿の栽培が広がっていったのは、室町時代以降。
江戸時代になると、西日本を中心に広く栽培され、重要な農作物になっていきました。
つまり、綿は日本人の暮らしにも、ずいぶん長い間関わってきた植物なのです。
昔の日本の綿と、今の綿は違う
ここも調べていて面白かったところです。
日本で古くから栽培されてきたワタは、アジアワタの系統です。
一方、現在世界で広く栽培されているのは、リクチメンなど別の系統のワタ。
アジアワタに比べて、現在広く利用されているリクチメンなどは、繊維が長く細いという特徴があります。
昔の日本では、各地で綿を栽培し、その綿から糸をつくり、布を織っていました。
三河木綿、遠州木綿、久留米絣、真岡木綿、結城木綿など、日本各地に木綿の産地が生まれたのも、綿が日本の農村で栽培されていたからです。
ところが、明治時代になると海外から安い綿花が大量に入ってくるようになり、日本の綿作は大きな打撃を受けました。
今では、日本の木綿織物の産地であっても、原料となる綿花そのものを国内で育てているわけではありません。
「遠州木綿」や「久留米絣」という名前を聞くと、その土地で綿も育てているように感じますが、現在の木綿産業では、綿花の栽培と、糸をつくること、布を織ることは別々の場所で行われています。
昔と今では、綿をめぐる風景もずいぶん変わったのですね。
私も、木綿の服を縫ってきました
そんな綿ですが、実は私の暮らしの中にも以前からありました。
私は遠州木綿の生地を使って、久留米の「うなぎの寝床」の現代風モンペを3枚縫いました。

木綿の生地は、肌触りがよく、普段着としても使いやすい。
自分で服を縫うようになって、布そのものにも興味を持つようになりました。
そして今度は、その布になるずっと手前。
畑で綿という植物を育てています。
畑で見ると、綿は「植物」だった
普段、服を着ているときには、綿を植物として意識することはほとんどありません。
「綿のシャツ」「綿のパンツ」と書いてあれば、それは素材の名前です。
でも畑に行くと、綿はちゃんと植物です。
葉が出て、枝が伸びて、つぼみができる。
花が咲く。
白かった花が、少しずつピンク色に変わる。
そして花が終わると、そこに小さな実ができる。
その実が膨らみ、やがて弾けて、綿が現れる。
綿になるまでにも、こんなにいくつもの段階があるのだと、育ててみて初めて知りました。
どんな綿なのかは、まだわかりません
この綿は、苗を友達からもらったものです。
だから、品種が何なのかはわかりません。
もしかしたら、昔から日本で育てられてきた系統なのかもしれないし、そうではないかもしれない。
今のところは、名前のわからない綿を育てているところです。
ただ、品種がわからないからこそ、これからどんな綿ができるのかを見るのも楽しみです。
綿が弾けたら、今度は実際の綿の姿もじっくり観察してみたいと思っています。
この暑さの中で、花を咲かせる
それにしても、今年の綿には驚かされます。

水も肥料も与えていないのに、この暑さの中で元気に育っている。
もちろん、どんな植物でも何もしなくて育つわけではありません。
植物には、それぞれ得意な環境があります。
でも、自分で育ててみると、植物には人間が思っている以上に、自分で生きていく力があるのだと感じます。
畑ではつい、「何を足したらよく育つだろう」と考えがちです。
肥料を足す。
水を足す。
何かをしてあげる。
でも綿を見ていると、時には植物が持っている力を邪魔せずに見ていることも、大切なのかもしれないと思います。
今はまだ、白いふわふわの綿はありません。
あるのは、緑の葉と、花と、膨らみ始めた小さな実。
これからこの実がどう変化していくのか。
綿が弾けるその日まで、もうしばらく畑で観察してみようと思います。
参考生地:・なぜ、私は畑にいろんな植物を植えるのか



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